これからの時代の「新任管理職の対話術」②

上司や先輩の言葉を素直に聞いてはいけない時代(column28)

「日本の総人口の推移」を見たことがありますか?日本の人口は、明治維新後の150年間で3300万人から1億2800万人弱まで急増しています。そして、今後急激に減少していくと言われています。ということは、これまでだれも経験したことのない時代が始まるのです。では、どうすればよいのか考察します。

 

日本の総人口の推移~実は、この150年間は異常な時代だった

 皆さんは、「日本の総人口の推移」を見たことがありますか?日本の人口は、江戸時代が始まる1600年頃まで、長らく800万~1000万人ほどで推移してきました。こんなに少なかったとは、ちょっと意外ですよね。現在の東京都の人口が1378万人なのですから。江戸時代になって世の中が安定して3000万人を超え、そのまま江戸時代が終わるまで推移しています。

 

出典 内閣府ホームページ

 

 

今年は明治維新からちょうど150年です。この150年間に、日本の人口は3300万人から1億2800万人弱まで一気に膨れ上がりました。特に維新後の130年間は、日本史上かつてないほどの人口爆発が起きていました。まさに異常な時代だったわけです。このことは、よく覚えておいてください。

 

そして、1995年から20年ほど日本の人口は停滞しましたが、2015年に実施された国勢調査によってついに減少が確認されました。今後は、急速に減っていくと予想されています。この、「人口急減・少子高齢化社会」というものを皆で心配して、皆で暗い気持ちになっているのが今の日本だと思います。

 

特に、現在35歳以下の人たちは、バブル崩壊後の「失われた20年」に物心ついたわけですから、「(日本の)将来に希望をもて」なんて言われても、なかなか難しいと思います。年上の人から安易に「希望をもて」なんて言われると、あまりに感覚が違うので、かえって距離を感じてしまうのではないでしょうか。

 

これからの心配をする前に、これまでの総括をしておこう

ただ、今後のことを心配するのも大切ですが、その前にこれまでのことをきちんと総括して区切りをつけておくべきでしょう。現代の日本は、それをしないまま、異常な130年間の残像にしがみついて、ただ嘆き悲しんでいるだけのように思えます。

 

たしかに、異常な130年間はいい時代でした。特に戦後の高度経済成長~バブル時代までは、マーケットがどんどん大きくなるので、ビジネスは伸びるのが当たり前でした。人をどんどん採用して、経営資源をどんどん投入して、どんどん売り上げを伸ばす。「24時間戦えますか」というCMのコピーが大流行し、「頑張れば報われる」とハードワークが推奨されていました。

 

その間に、何度か不況期が訪れましたが、これは供給過剰の調整期であって、じっと我慢していればやがて好況が戻ってきました。バブル崩壊後も、この「じっと我慢していれば」というパターンでやり過ごそうとした経営者たちは、残念ながら破綻していきました。時代の変化を見ずに、これまでと同じやり方で対処しようとしたからです。

 

とはいえ、「では、これからの時代は何もかも縮小するのか?」というと、そうではありません。いつの時代でも、伸びる分野は必ず存在します。実際に、この20年間で大きく事業を伸ばした会社はたくさんあります。「伸びる分野もあれば、縮小・消滅する分野もある」というのが正しい理解だと思います。

 

厳しい言い方ですが、これからの時代は縮小・消滅する事業や地域があるのはやむを得ないのです。そこを何とか延命させようとするから無理が生じます。そして、こうした時代で大事なことは、「これまでやっていた分野にしがみつかない」「伸びる分野で頑張る」「いつまでもこの分野が伸びるとは思わない」ということです。

 

ハードワークではなく、ライトワークを

人口が増加して、マーケットがどんどん伸びる世の中では、今いる場所で目をつぶって頑張っていれば、やがて報われる時がきました。そういう時代に長く生きた人は、このような生き方が身に沁みついてしまっています。しかし、これからの時代に「目をつぶって一所懸命に頑張る」というのは、かなりリスキーな生き方だと思います。

 

これからの時代は、ハードワークよりもライトワークが求められる時代だと思います。ハードワークは、ロボットやAIに任せてしまいましょう(笑)。では、ライトワークとはどのようなものか。簡単に言うと「必要とされる仕事」「目的が明確な仕事」です。

 

皆さんは、これまでに「受験」というものを経験してきたと思います。受験の目的は「合格する」ことです。しかし、受験の時に「合格ラインを調べずに、100点をとろうとする」「やたらと奇麗なノートを作る」「参考書や問題集の最初から取り掛かる」などをやった経験はありませんか?いずれも、「けっこうやりがち」ですよね(笑)。しかし、これらは「そこまで必要ない、合格するという目的を見失った行為」です。受験勉強ならまだいいですが、仕事でこうしたことをやってはいけません。

 

日本のホワイトカラーの生産性が上がらない原因は、「そこまで必要ない、目的が不明確な仕事」に懸命に取り組み過ぎることにあります。新任管理職の皆さんは、まず自分自身がライトワークをすること、そして部下にもライトワークをさせることを意識してください。

 

総括する習慣をつけよう

しかし、「ライトワークをする・させる」ことを意識しようにも、現実的に何から手をつけたらいいかわかりませんよね。そこで、一つお勧めがあります。それは、「総括する習慣をつける」ということです。打ち合わせや会議を終えた後に、必ず総括する時間をとる。商談を終えた後にも、必ず総括する時間を設けましょう。

 

「そこまで必要ない、目的が不明確な仕事」がなぜ生まれるかというと、コミュニケーションに齟齬があるからです。そして、こうした行き違いを防ぐコツが、「同じ事物を見て、どのように把握したかをその場ですり合わせる(=総括する)」ことなのです。

 

とはいえ、総括するって、どうやるのかイメージが湧かない人も多いと思います。簡単な方法をご紹介しましょう。打ち合わせや商談を終えた後に、時系列を辿りながら概略を話すのです。打ち合わせの相手が上司やお客様だったら、自分のほうで総括します。相手が部下だったら、部下に総括させましょう。ちょっとした会議や商談なら、時間は2、3分もあれば十分です。

 

「人間の記憶は、時系列を辿るようにすると甦りやすい」という特性があります。会議や商談の間に重要だと思うことをメモしておいて、それを見ながら時系列を辿るように総括する。ポイントは、商談や打ち合わせを終えた後にすぐやることです。簡単でいいから、すぐにやる。「後で議事録を見れば(作れば)いいや」というのはNGです。

 

実際にこれをやると、「えっ、そんな捉え方をしていたのか?」「あれっ、そこが重要だと思っていたのか!」と驚くことがあると思います。同じ場所にいて、同じ場面に接していても、人はそれぞれ自分にとって都合のいい勝手な解釈をしています。それを放置しているから、コミュニケーションの齟齬が生まれるのです。

 

特に、若くて経験の浅い人は、背景情報に興味をもたず、「自分が具体的に何をすればよいのか」を知ろうとする傾向があります。「TO DO」ばかり知ろうとして、「WHY」をスルーしてしまうわけです。これが、「そこまで必要ない、目的が不明確な仕事」の温床になります。「いちいち面倒くさい上司だなぁ」と部下に思われるかもしれませんが、後で必ず感謝されますから、ぜひ総括する習慣をつけてくださいね。

 

 

今回は、大きな時代の流れを見ましたが、次回はここ数十年の時代の流れを見ていきます。特に、新任管理職の皆さんにとって関心のある「マネジメントスタイルの変遷」について詳しく見ていきたいと思います。これからの時代は、かつてのマネジメントスタイルが通用しない世の中になっていきます。では、どうすればよいのか考察します。