あなたに必要なのは「話す力?」or「話し合う力?」⑨

強制ではなく 対話によって集団を動かす(2)(column48)

緊急事態宣言の中、3密となるパチンコ屋に休業してもらいたい。今回から2回に分けて、「非協力的な人たち」をどう動かすか考えていきます。今回も、集団を一括りにしないようにしましょう。非協力的な中には、内心動揺している人がいるはずです。これらの人は、理屈ではなく情動に働きかけて動かすようにしましょう。

 

決して相手を敵視しない

前回のお話で、「協力的な2割+中立的な6割」の合計8割を動かすことができました。今回は、残りの「非協力的な2割」の人たちをどう動かすか考えていきます。

 

 

大事なことは、強制ではなく、対話によって相手を動かすことです。非協力的な人たちに接する際にも、決して相手を敵視しないようにしましょう。敵視してしまうと、相手は意固地になって余計に話を聞かなくなります。それと、非協力的な2割の人たちが一致団結してしまうと、もっと面倒なことになってしまいます。

 

また、相手を敵視してこじれてしまうと、後で個人的に恨まれたり嫌がらせを受けたりするかもしれません。コロナ問題が起きている間はやり合いをしても、収束したら「恨みっこなし」にしたいですよね。

 

「切り崩す」という意識をもとう

前回、「集団を一括りにしないことが大切だ」とお伝えしました。今回も、非協力的な2割の人たちを一括りにしないようにしましょう。よく見ると、「8割が協力しているのを見て、内心動揺している人たち」と「この状況に至っても頑なで、本当に非協力的な人たち」に分けられると思います。

 

ここでは、「個別に対話して、相手を切り崩していこう」と考えましょう。8割が休業している中で、まだ開業しているお店とコンタクトをとり、例によって対話を回していきます。 

 

 

対話は、いつものように「働きかけ・問いかけ」から始めます。話しやすい雰囲気を作りながら「その後、いかがですか?」と問いかけてみましょう。相手に現在の状況をどのように認識しているのか聞いてみます。

 

そうすると、相手はいきり立って「いかがですか? じゃねえよ! このヤロウ!」となるかもしれません。そして、ここぞとばかりに自己主張を始めたらチャンスです。話を聞きながら、じっと相手を観察しましょう。

 

共感を伝えて揺さぶりをかける

ここでは決して反論などしないことです。相手がいきり立っている時に理屈を述べ立てると、決定的な対立関係になってしまいます。理屈ではなく、情動に働きかけます。「うんうん」と熱心に聞きながら、積極的に共感を伝えて、相手の感情に揺さぶりをかけましょう。

 

 

そうすると、「ウチも大変なんですよ。パチンコ屋って儲かると思われたのは昔の話で、今はけっこうカツカツで。設備投資も必要だし、そんな中で休業なんてしたら、ひとたまりもありませんよ。なんで、それをわかってくれないんですか!」なんて泣き言が出てくるかもしれません。それも、うんうんと聞いてあげます。

 

ここでも、決して説得しないでください。それから、「こんな話を聞いても、自分は何もできないんだから、この時間はムダだ」「話を聞いていると、自分が不利になるんじゃないか」と考えて、聞くのを遮断しないでください。「話すだけ話させて、相手を空っぽにしよう」とイメージしましょう。

 

相手が感情的になると、泣き言を言っていたかと思えば、食ってかかってくることもあると思います。でも、とにかく聞きましょう。「泣く(嘆く)」「怒る」などの激しい感情は大量のエネルギーを必要とするので、「ずっと嘆き続ける」「ずっと怒り続ける」というのは難しいものです。とにかく、相手が話している限り聞きましょう。

 

そうすると、ガーッと話していた相手が「フッ」と抜けるような感じになります。これは当然のことで、何事も力を入れ続けることは難しいわけです。力が抜けるタイミングが必ずやってきます。ここに「虚」が生まれます。言い換えると「隙」ですね。

 

とはいえ、ここでも説得はしません。隙を見せたところに安易に攻め込むと、相手は「コイツは抜け目のないヤツだ」と感じて冷めてしまいます。あわてない、あわてない。

 

嘆く・怒るのにくたびれると、「こんなに話を聞いてくれて、わかってくれるのなら、営業を認めてくださいよ」みたいになるかもしれません。「お願い・懇願」ですね。そうしたら、こちらも困ってください。相手も困っているけど、こちらも上司との板挟みになって困っているのです。「いや~そう言われても、う~ん、困った困った困った困った…」と言って、相手の要求は認めないで、ずっと困ってください。

 

ここで、「ダメです!」みたいなキッパリ感は出さなくていいです。そうすると、また対立関係になってしまう。困った困ったとひたすら困ってください。「お前じゃ相手にならん! もっと上の人を出せ! 知事を呼べ!」などと言われるでしょう。こういう時にも、「いや~、そう言われても…」と困ってください。それこそ、「困り勝つ」みたいな感じですね。

 

同質的な感覚から好意が生まれる

そうすると、相手からすると「自分も困っているけど、コイツも相当困っているんだな」という同質的な感覚が生まれてきます。これは、一種の好意であり、相手の敵対心が薄れるきっかけになります。

 

さらに人間には返報性(お返しをしたくなる)という特性があり、自分ばかり一方的に話していると、バランスが悪く感じます。「バツが悪い感じ」がしてくるのですね。

 

 

「相手も自分と同じく困っている」「自分の話はさんざん聞いてくれた」「世の中の大勢も、休業に応じている」ということを認識すると、相手の中で揺らぎが生じてきます(※)。怒る・嘆くことで疲れたところに揺らぎが生じて、大きな「虚」「隙」ができます。おそらく、重苦しい間が生じることでしょう。

 ※対話力強化講座 応用コースを受講した方は、「多角的に問いかけて 現状認識させる」を思い出してください。

 

ここで必要なのが「きっかけ」です。相手が折れるきっかけをつくる。そのためには、「こちらが少しだけ折れる」のがいい。ちょこんと頭を下げる。ごく小さな声で「すいません」と言ってもいいです。ほんの少しだけ、自分を下に置く。

 

そうすると、「まあ、アンタがそこまで言うなら…」という感じになることが多い。これは、「この担当者がしつこくて、しょうがないから折れてやったんだ」という、折れた自分を正当化しようとする心理です。そうしたら、「有難うございます」と深々と頭を下げましょう。

 

「ひたすらに困ってみせる」のは弱者の処世術

余談になりますが、「明確な要望を示し、相手の前でひたすらに困ってみせる」というのは、「弱者にとって最強の処世術のひとつ」です。

 

松下幸之助という人は、これが非常に上手だったと思います。小学校しか出ていない。技術もなく、身体も病弱である。経営者としては弱者です。ただ、自分よりも優秀な人を動かすのがうまかった。「こうしたいんやけどな~」と言いながら、ひたすらに困ってみせる。そうすると、社員たちが、社長を困らせまいと頑張ってくれる。

 

ベンチャー企業の経営者にも、これが上手な人がいます。「こういうサービスを開発したい」と言って、ひたすらに困ってみせる。そのために資金が必要になれば、「資金が必要だ」と言って、ひたすらに困ってみせる。そうすると、「自分は資金が出せないけど、この人なら協力してくれるかもしれませんよ」と紹介してくれる人が現れる。

 

大事なのは、「明確な要望+困ってみせる」ことです。ただ泣いているだけで助けてもらえるのは、赤ちゃんだけです。ボンヤリ困っていてもダメですからね。

 

今回は、「非協力的な2割のうち、内心動揺している人たち」を、情動に働きかけることによって動かしました。では、動揺が感じられない、情動に働きかけても動きそうもない人たちは どうするか。次回は、「最後まで頑なで非協力的な、残りの1割の人たちを どう動かすか」について考察します。 

 

⇒ 次回「最後まで非協力的な人たちを どう動かすか」を読む